【社労士監修】障害年金の等級変更と額の改定請求について知っておくべきこと

障害年金では、障害の状態が増悪することによって年金の等級変更の手続きができます。このときの手続きを「額の改定請求」といいます。

この記事では、障害年金の等級変更に必要な「額の改定請求」について詳しく解説します。

障害年金の等級変更とは

障害年金の等級は、障害基礎年金においては障害の程度に応じて1級から2級まであります。障害厚生年金においては障害の程度に応じて1級から3級まであります。等級によって支給される年金額が異なります。

障害年金の等級変更(年金額の変更)は、定期的に提出する診断書(障害状態確認届)で自動的に行われます。

なお、障害の程度が重くなったときに限っては、障害状態確認届を待たずにその旨を申し立てることもできます。この場合は「障害給付額改定請求書」の提出が必要です。

額の改定請求の方法

障害等級の変更をしたい場合には、障害給付額改定請求書に、医師が作成した診断書を添付のうえ、お近くの年金事務所または街角の年金相談センターに提出します。また、障害基礎年金のみを受けている方は、市区町村役場の窓口でも提出できます。

<書式について>

障害給付の額の改定請求書の記入例はこちら(クリックで見ることができます。)

額の改定請求書に添付する書類

障害等級を変更したいときに必要な添付書類は以下とされています。

1.受給権者の年金証書等

2.提出する日前3月以内に作成された次の書類(提出する日前3月以内の障害の状態が記入されたもの。)

①医師又は歯科医師の診断書(この診断書の用紙は年金事務所にあります。)
②指定された病気やけがによって年金を受けている方は、レントゲンフィルム
③加算額の対象者のうち国民年金法、厚生年金保険法及び国家公務員共済組合法の障害等級の1級または2級に該当する障害の状態にある子がいるとき(厚生労働大臣から診断書が不要である旨の通知を受けている方を除きます。)は、医師又は歯科医師の診断書
④当該請求者が3級の障害厚生年金又は障害共済年金の受給権者であって上記に該当する子が指定する病気やけがによる場合はレントゲンフィルム

3.提出する日前1月以内に作成された次の書類

①加算額または加給年金額の対象者があるときは、その対象者と受給権者との身分関係を明らかにすることができる市区町村長の証明書または戸籍抄本(住民票でこれにかえることはできません。)
②当該請求者が3級の障害厚生年金または障害共済年金の受給権者であって加算額または加給年金額の対象者があるときは、生計維持を証する書類(個人番号(マイナンバー)を記入したときは、添付を省略できる場合があります。)
③障害給付の支給事由となった傷病の初診日以降に共済組合等の組合員または加入者であった期間を有する者にあっては、当該共済組合等の年金加入期間確認通知書(障害給付を受けられるようになった以降の疾病または負傷により障害程度が重くなった方に限ります。)

 

額の改定請求の注意点

年金額の改定の請求は、次の(1)(2)の日を過ぎていないと請求できません

(1)年金を受ける権利が発生した日から1年を経過した日
(2)障害の程度の診査を受けた日から1年を経過した日

※以下に定められた障害の程度が増進したことが明らかである場合には1年を待たずに請求することができます。

 

65歳以上の方の改定請求

3級の障害厚生年金を受けている方(過去に支給事由を同じくする障害基礎年金の受給権を有していた方をのぞく)が65歳以上になったときは、年金額の改定の請求はできません。

1年を経過しなくても額の改定を請求できる場合

受給権を取得した日、または障害の程度の診査を受けた日のどちらか遅い日以降に、以下に該当した場合に限ります。

※なお14の場合は、完全麻痺の範囲が広がった場合も含みます。

眼・聴覚・言語機能の障害
両眼の視力の和が0.04以下のもの
両眼の視力の和が0.05以上0.08以下のもの
8等分した視標のそれぞれの方向につき測定した両眼の視野がそれぞれ5度以内のもの
両眼の視野がそれぞれ10度以内のもの、かつ、8等分した視標のそれぞれの方向につき
測定した両眼の視野の合計がそれぞれ56度以下のもの
両耳の聴力レベルが100デシベル以上のもの
両耳の聴力レベルが90デシベル以上のもの

喉頭を全て摘出したもの

肢体の障害
両上肢の全ての指を欠くもの
両下肢を足関節以上で欠くもの
10両上肢の親指および人差し指または中指を欠くもの
11一上肢の全ての指を欠くもの
12両下肢の全ての指を欠くもの
13一下肢を足関節以上で欠くもの
14

四肢または手指若しくは足指が完全麻痺したもの(脳血管障害または脊髄の器質的な障害によるものについては、当該状態が6月を超えて継続している場合に限る)

内部障害
15心臓を移植したものまたは人工心臓(補助人工心臓を含む)を装着したもの
16心臓再同期医療機器(心不全を治療するための医療機器をいう)を装着したもの
17

人工透析を行うもの(3月を超えて継続して行っている場合に限る)

その他の障害
186月を超えて継続して人工肛門を使用し、かつ、人工膀胱(ストーマの処置を行わない
ものに限る)を使用しているもの
19人工肛門を使用し、かつ、尿路の変更処置行ったもの(人工肛門を使用した状態およ
び尿路の変更を行った状態が6月を超えて継続している場合に限る)
20人工肛門を使用し、かつ、排尿の機能に障害を残す状態(留置カテ-テルの使用または自己導尿(カテーテルを用いて自ら排尿することをいう)を常に必要とする状態をいう)にあるもの(人工肛門を使用した状態および排尿の機能に障害を残す状態が6月を
超えて継続している場合に限る)
21脳死状態(脳幹を含む全脳の機能が不可逆的に停止するに至った状態をいう)または遷延性植物状態(意識障害により昏睡した状態にあることをいい、当該状態が3月を超え
て継続している場合に限る)となったもの
22人工呼吸器を装着したもの(1月を超えて常時装着している場合に限る)

障害等級が上がると年金が大幅に上がる可能性がある

額の改定請求が認められると「額改定通知書」や「年金振込通知書」等が郵送されます。障害年金の等級変更が認められたときは、額の改定請求日の翌月から障害年金の額が変更されます。

なお、障害厚生年金において障害等級が3級から2級に変更になった場合、生計を維持している子や配偶者がいる場合は、年金額に「子の加算額」や「配偶者の加給年金額」がつきます。

<加算額・加給年金額について>

・障害基礎年金の子の加算額についてはこちら

・障害厚生年金の配偶者の加給年金額についてはこちら

よくある質問

ここでは障害年金の等級変更に関する手続きである額の改定請求のよくある質問をお知らせします。

①更新(障害状態確認届)で等級が同じだった場合、すぐに額の改定請求ができますか?

有期認定の更新時の障害状態確認届によって障害年金の等級が変わらなかった場合は、1年を待たずにいつでも額の改定請求ができます。なおここで額の改定請求を行った結果、障害年金の等級が変わらない場合はその後1年間は額の改定請求ができません。

 

②更新で減額された場合、すぐに額の改定請求ができますか?

有期認定の更新時の障害状態確認届によって障害年金の等級が下がった場合は、①と違ってすぐにはできません。できるようになるのは誕生日の属する月の3か月後の初日から1年経過日の翌日になります。

例:4月生まれの人

ここでの診査日は誕生日の属する月の3か月後の初日という日になります。この場合は7月1日になります。そこから1年後の翌日ですので、翌年の7月2日から額の改定請求ができます。

 

③更新で増額された場合、すぐに額の改定請求ができますか?

有期認定の更新時の障害状態確認届によって障害年金の等級が上がった場合は、①と違ってすぐにはできませんが。②とも異なります。

できるようになるのは誕生日の属する月の初日から1年経過日の翌日になります。

例:4月生まれの人

ここでの診査日は誕生日の属する月の初日という日になります。この場合は4月1日になります。そこから1年後の翌日ですので、翌年の4月2日から額の改定請求ができます。

 

④別な病気で障害が新たに発生した場合、額の改定請求ができますか?

別傷病を伴う障害の増進では、額の改定請求ではなく、新たな障害に対する裁定請求を行います。

 

⑤支給停止されていた場合、額の改定請求ができますか?

有期認定の更新時等で等級不該当のため支給停止されている場合で、障害が増進した場合は額の改定請求ではなく、「障害給付支給停止事由消滅届」により、支給の再開するよう請求をします。

<書式>

障害給付の受給権者の支給停止事由消滅届の記入例はこちら(クリックで見ることができます。)

 

⑥もし更新(障害状態確認届)で等級変更により支給停止になった場合、すぐに支給は停止になりますか?

更新で障害等級が変更(下がる)ことでの年金額の減額や、支給停止になる場合、誕生月の4ヶ月目分から支給額の減額、または支給停止となります。

例えば、誕生月が7月の場合、11月分から支給額の変更または支給停止となります。

 

⑦障害認定日に遡及して請求する場合、裁定請求日時点で額の改定請求ができるか

障害認定日における請求が1年以上遡及して行われる場合に額の改定請求を同時に行うことは可能になります。この意味ですが、ちょっと専門的になりますが、裁定請求日時点の等級について障害認定日の等級より上位と認定されない場合に不服申立てすることが適法となるという意味があります。

 

⑦額の改定請求をすることで等級が下がることはあるか

額の改定請求で等級が下がることはありません。あくまで「障害が増進して等級が上がるかどうか」を申したてる請求だからです。

 

⑧額の改定請求をして等級が上がらなかった場合、不服申立て(審査請求)はできるか

障害年金の等級変更がされない決定について不服がある場合、審査請求ができます。決定を知った日の翌日から3か月以内に社会保険審査官に審査請求を行います。なお、審査請求の決定に不服がある場合は、再審査請求ができます。再審査請求は決定書の謄本が送付された日の翌日から2か月以内に社会保険審査会に対して行います。

 

審査請求や再審査請求の概要やサポートについては以下の記事で解説しています。

>>【審査請求や再審査請求でのサポート内容について】

最後に

当センターでも、自分では手続きができないということで相談されることが少なくありません。

自分で手続きができなくてもサポートを受けながら手続きを進め、障害年金の受給ができています。自身の障害年金手続きの負担とサポートでの金銭面の負担を含めた生活とのバランスをどのように考えるか。これも障害年金手続きをする上での課題の一つと言えるかもしれません。

障害年金の手続きを進めるために知っておくべきこと

今回は「障害年金手続きがめんどくさい場合の対応方法」について解説しました。障害年金の手続きを進めるためには「障害年金がもらえる条件」や「障害年金の申請の流れ」を知っておくことも重要です。ぜひこちらの記事も併せて読んでみて下さい。

>>【[徹底解説]障害年金がもらえる条件】

>>【障害年金申請の流れ】

 
自分が具体的にどのようなサポートを受けることができるかを知っておくこともオススメします。

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